北京オリンピック(4)
今回は「写真判定」の話です。
北京オリンピックに限りませんが、陸上競技トラック種目で着順が微妙な場合、アナウンサーや時には解説者までもが決まって「写真判定に持ち込まれたようです」などと言うのですが、これを聞くとあたかも着順は肉眼で判定し、肉眼でわからないものだけ写真判定にするか、あるいは電気計時で100分の1秒の差がつかなかった場合だけ写真判定を行っているように思えます。アナウンサーはともかく、解説者でこのようなことをいう方は、おそらく審判員として写真判定をやったことがない人でしょう。
これは明らかに間違っていて、トラック種目はすべて写真撮影を行い、写真によりタイムと着順を決めています。この写真は特殊な画像で、ゴールライン(幅がありますが、100mのスタート側から見て奥側)の延長上に設置された特殊なカメラでゴールラインの上だけを時間の経過とともに連続的に撮影し、それを横につなぎ合わせます。決してある瞬間だけを撮影したものではありません。横軸は長さではなく時間になっているわけです。
写真はこうして撮影されるわけですが、これで着順とタイムが自動的に計測されるわけではなく、判定装置(今はパソコン)を写真判定員が操作して、選手毎にトルソー(胴体)の位置を確定させていきます。判定員によってトルソーの取り方が微妙に違うので、微妙な場合は何人もが見て合意したところで判定を出すので、判定に時間がかかるわけです。特に隣のレーンがほぼ同着になると、イン側の選手が隠れてしまうので、トルソーがどこか一見してわからず、判定は非常に難しくなります。
タイムは1/1000秒単位まで一応は計測可能ですが、写真の解像度にも限界があるので、ルール上は1/1000秒差は誤差とみなし、同着と判定されます。これは下位ラウンドから上位ラウンドに進む場合のプラス取りを判定する場合も同じです。