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調整

調整とは、超回復現象を期待して行うものです。練習で強い負荷をかけ続けると疲労がたまり、だんだん調子は落ちてきます。調子が底を打ったあたりで練習量を落としたり休養したりすると、急速に調子が上がり、疲労が抜けると以前の走力より高いレベルまでリバウンドします。これが超回復現象です。

したがって、ある程度疲労がたまるほど追い込んでいない人が調整しても無意味となるどころか、急に休んで逆に生活のリズムが崩れて体調を崩したり、代謝が減って体重が増えてしまったり、脚が軽くなりすぎてうまく走れなかったり、といったことが起こります。また、休みすぎたら走力は当然低下します。この辺の加減は個人差が非常に大きいことから、もはや経験によるとしか言いようがありません。単純に練習量を減らせばいいというものではありません。

練習の流れ

長距離のトレーニングでは、一般的には練習の負荷に波を作ります。常に全力を出し切ることが良いわけではありません。トレーニングでは練習と休養はセットになっていると考えてください。

まず、「目標のレースに向け2ヶ月間は追い込み、1ヶ月間は疲労を抜く」というような波。その追い込みの期間中でも、「2週間はかなり追い込んで1週間はちょっと落とす」というような波。また、1週間の中でも「月曜は休み、水曜はちょっと負荷をかけ、金曜は軽く、土日は追い込む」というような波。

でも、単にやみくもにメリハリをつければいいというものではなく、常に腹8分目の練習で強くなるタイプの人もいて、どちらがいいというものではありませんが、練習の流れ、負荷の波を日頃からしっかり意識している人は、狙った大会にきっちり合わせられる調整力が身につきやすい、ということは言えると思います。なぜかと言えば、それを応用したものが「調整」だからです。

トレーニングの3要素

トレーニングとは、ただ走ったり筋力トレーニングしたり、というだけではありません。次の3つの要素をバランスよく組み合わせることで最大の効果を生み出します。

(1) 練習
(2) 休養
(3) 栄養

「練習」は当然のこととして、「休養がトレーニング?」と思うかもしれませんが、適切に休養をとらなければオーバーワークとなり、故障、病気、慢性疲労などにつながります。また、休養には後で述べる「超回復」のためにもなくてはならないものです。

休養には、睡眠、入浴といった日々必ずとる必要のある休養のほか、1日から数日の間、練習を全く行わなかったり(完全休養)、ジョグなどの軽い練習で切り上げる(活動休養、積極的休養)短期の休養、ハードトレーニング期の後しばらくの期間、練習量を減らして疲労を抜く中長期の休養があります。また、一流選手などでよく「オリンピックが終わった後、1年間は休養する」というように超長期の休養をとる選手もいますが、ここまでくるとトレーニング理論的には休養ではなく、「休止」と言った方がいいかもしれません。

痛んだ筋肉の修復や疲労回復には休養だけでは不十分で、適切に栄養を摂取することが大切です。何も値段の高い食材を選んで食べたり、サプリメント(栄養補助食品)を摂取すればいいというわけではありません。基本的には肉、魚、穀物、海鮮類、野菜、果物など自然の食材を好き嫌いなくバランスよく、適度な量を食べていれば通常は問題ありません。逆に日常的にサプリメントや薬に頼らなければならない状態では、長距離選手としては明らかにオーバーワークです。アルコールだって適量であれば全く問題ありません。むしろ全く飲まないより適量を飲んだ方が各種成人病の発症率が低いというような研究結果もあるそうです(もちろん飲めない人が無理に飲む必要はない)。