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福岡国際マラソン

第60回を迎えた福岡国際マラソン。大阪世界選手権の選考レース第1戦であると同時に、「皇帝」ゲブルセラシエと世界王者のガリブ(モロッコ)の対決、そしてこれに藤田、尾方、諏訪といった日本勢がどう挑むかが焦点だった。ゲブルセラシエが終盤で力の差を見せ、2時間06分52秒で優勝。日本人1位は奥谷(SUBARU)が2時間08分49秒で入り、2007年大阪世界選手権の代表当確となった。
詳細は以下。

レース序盤、体感気温がかなり低かったのか、ペースメーカーの先導が不味く5km15分44秒で入ってしまう。ようやく気付いたかその後はペースアップしたものの10kmは30分56秒(15分12秒)。早くも快記録への期待は薄れたが、日本人にとっては好都合か。15kmは更にペースが上がり、45分56秒(15分00秒)。直後の給水で藤田がスペシャルを取り損ねたように見えた。

20kmは60分59秒(15分03秒)とすっかり3分ペースに安定。しかし力のない日本人は徐々に脱落していく。藤田は給水の失敗を避け、給水所直前で強引にペースアップし、先頭でボトルを取る。しかし他のボトルを倒してしまっていた。焦り、余裕のなさが見受けられたところ、解説の谷口氏にも余計な動きを指摘されていた。コース取りもコーナーで最短距離をとろうという意図はわかるが、集団の流れからあえて一人だけ外れて走ることもあるまい。

中間点は64分18秒。最近のペースメーカー付きレースでは64分台というのは珍しい。25kmは1時間15分54秒(14分55秒)と初めて5km14分台に入った。5kmからの20kmは60分10秒と日本人にはそろそろ持続が厳しいペースになってきた。その後、それまでペースメーカーの直後にピタリとつけていた藤田が集団の後方へ下がっていった…と思っているうちに集団から離され始めた。意外にも尾方までもここで藤田同様に遅れ始めた。外国人に着いていくのは奥谷と諏訪。表情は奥谷の方が厳しく、諏訪はまだ余力がありそうに見えるがサングラスの奥までは窺えない。

30kmは1時間30分48秒(14分54秒)。2区間連続14分台は相当に力がないと着いていくのは難しい。ゲブルセラシエとガリブはまだ余裕。ガリブは脚の返しが速いモロッコ人らしい走法。ゲブルセラシエはようやく自分のペースにはまってきた感じ。昨年の優勝者、バラノフスキー(ウクライナ)がやや苦しそうにしながらもパワフルな走りで引けを取らない。寒さには滅法強いという強みも自信につながっているのだろうか。ビウォット(ケニア)はケニア人には珍しくピッチ方法だが走りはあまり洗練されていない。前述の3人とは力の差がありそうに見える。奥谷はかなり表情が険しくなり、懸命に着いている。諏訪は表情ではまだ大丈夫そう。尾方、藤田、佐藤智之(旭化成)はすでに100mかそれ以上遅れてしまった。

31.6kmの香椎折り返し点を過ぎると展開が変わった。折り返してすぐペースメーカーが離脱すると、それに巻き込まれるような形で諏訪とビウォットが一瞬遅れる。と同時にゲブルセラシエが先頭に立ち、ペースアップを始めた。奥谷は懸命に着こうとするが、33km~34kmは何と2分47秒。これには奥谷もたまらず、34km付近からじわじわと離され始める。35kmは1時間45分30秒とこの5kmは14分42秒。2回連続14分台の後の14分42秒は日本人では高岡以外には無理だろう。奥谷はそれに8秒差だから大健闘と言える。それ以上にバラノフスキーの走りは見事。

ゲブルセラシエはなおもペースを緩めず、1~2mリードを奪ったところでバラノフスキーが脚に痙攣が来た。ペースダウンを余儀なくされたところ、ガリブも限界が来たか39km付近でついに遅れ始める。40kmは2時間00分20秒(14分50秒)とゲブルセラシエも圧倒的なスパートをしているわけではない。むしろストライドに少し衰えも見え隠れしているが、ガリブはここで6秒差、バラノフスキーは12秒差となり、勝負はほぼ決した。奥谷はこの5kmを15分56秒、諏訪は15分57秒ですでに先頭とは1分以上の差となったが、この2人の差は16秒差とほとんど変わっていない。奥谷が楽に逃げ切るかに見えた。

ゲブルセラシエはこの後もペースアップこそしないものの落ち込みなく2時間06分52秒(6分32秒)で優勝。2位はガリブで決まりと思ったが、バラノフスキーがトラックに入ってから大きなストライドで猛追し、最後の直線でついにガリブを逆転、ゴールの1歩手前で脚が痙攣したがなんとかなだれ込んで2位を確保。2時間07分15秒(6分43秒)。ガリブはゲブルセラシエに離されてから戦意喪失したか、ラストは6分53秒かかって2時間7分19秒。4番手に奥谷が入ってきたが、いつのまにか諏訪が30~40m差に迫ってきている。最後の直線で15~20m差まで詰め寄ったが、奥谷が何とか逃げ切り2時間08分49秒(7分15秒)。諏訪は3秒差。ラストでATPを使い切ったような状態でゴール後膝から崩れ落ちた。諏訪は十分に代表候補となるだろう。

勝負に加われなかった尾方は2時間10分48秒で6位。疲労困憊という感じではなかっただけに、おそらく本人も絶好調という認識ではなく、14分台のペースは無理と判断し、前の2人がオーバーペースでつぶれることに賭け、自らは2時間09分30秒狙いに変えたのだろう。結果的には前の2人は粘り勝ち、自分は予想以上に失速してしまったのだが。対照的に自信満々だった藤田は結局2時間11分50秒かかって8位。気負いがあったのと、たぶんピークを過ぎていたものと思われる。駒大のパターンは大学3~4年で好成績をあげ、社会人になってからは1~2年目がピーク(藤田、西田)。20代前半で最高のパフォーマンスが得られる練習を30歳でやってもダメということに気付いてもらいたい。途中でしきりに太腿を叩いていた(坐骨神経痛?)が、身体に負担をかけすぎなのではないか。年齢なりにトレーニングも変えていかなければならない。ちなみにゲブルセラシエは33歳、ガリブは34歳。まだまだ老け込む歳ではない。

注)ゲブルセラシエは、新聞・テレビ等ではゲブレシラシエと表記されているが、綴りはGebrselassieであり、ゲブルシラシエと発音することはあっても「ゲブレ・・・」とは発音しないと判断し、ゲブルセラシエと表記している。陸マガ・月陸でも同様。

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