フラット走法って本当にいいの?
最近の市民ランナーの雑誌は「フラット走法」一辺倒。ランナーズやクリールの7月号にもDVDの付録がついている(メーカーの宣伝だが)。しかし、フラット走法は本当に長距離ランナーの理想の走法なのか?いや、そもそもフラット走法というものを誤って解釈していないだろうか?
実際に付録DVDを見てみると、フラット走法のポイントは、「直立姿勢から前方に倒れこみ、自然に足が出るイメージ」とか「足を引き付ける動き」を強調している。前者はもう20~30年も前から言われていることで、初めて聞くと「なるほど!」と思うかもしれないが、次の1歩は一体どうする? 膝が完全に曲がった状態から伸展させるのはすごいエネルギーを消費する動作だし、重心が完全に落ちてしまっていて、フラット走法でいう上下動のない動きにつながらないのは明らか。全くの間違いである。
次に足の引き付けだが、フラット走法とは本来、上腿と下腿の角度をあまり変えない、膝を少し曲げた状態で股関節のスイングにより推進力を生む走法である。しかし、映像を見るとこれまた20~30年前にスプリントドリルなどで行われていた動きそのもの。下腿の巻き込み・振り出しの動作をしてしまっていて、どちらかというとピストン走法の動きに近い。この動きで重心の真下に着地すると、着地はフラットにはなるが、推進力は得られない。わかりやすく言うと、運動会などの「入場行進」がこの動きに近い。普通の歩行と違い、確かに着地はフラットになるが、歩く速度は遅くなる。しかもこんな動作を長時間続けるのはよほど筋力と持久力に優れていなければできないだろう。また、この動作は上体が直立姿勢でないとできず、「倒れ込み」イメージとは全く矛盾している。
こういうのを見ていると、フラット走法という言葉に踊らされているとしか思えない。映像で解説している動作をマスターしても、フラット着地はできてもその場駆け足にしかならず、スイング動作につながることはないだろう。活字や映像として出す以上、きちんと理解したうえで出してもらいたい。ちなみに、フラット走法とピストン走法はどちらも長所・短所があり、どちらが優れているという結論は出ていない。ちなみにエチオピアのケネニサ・ベケレの弟、タリク・ベケレ(5000m12分55秒)のランニングフォームをたまたま見つけたのだが、極端なかかと着地。
個人的には、初心者はより歩行動作に近いかかと着地が好ましいと思う。歩行は脚をスイングしなければ進まないのと同じで、まずは着地がどうのこうのより、スイング動作をしっかりマスターしてもらいたい。
コメント
フラット走法について参考になりました。
ありがとうございます。
投稿者: 浜村拓夫 | 2007年07月08日 13:18
タリク、踵接地に見えないんですが…
投稿者: マル | 2008年10月15日 22:01
もう元の記事を書いてから2年以上経っているので仕方ないのですが、今リンク先の写真を見たら当時と変わっていました。
当時の写真はまさにかかとから着地する瞬間で、爪先は大きく上に上がっていました。前から靴底が見えるくらいに。
今の写真はまだ前脚の膝が伸びていませんから、このあと接地に向けて膝を伸ばすときに爪先がぐっと上がると思われます。
投稿者: rikanen | 2008年10月15日 23:49
元の写真がどこかに残っていないか探してみたらありました。
http://www.iaaf.org/history/WJC/season=2006/eventCode=3486/news/kind=100/newsid=35231.html
これを見れば納得いただけるでしょうか?
投稿者: rikanen | 2008年10月15日 23:57
すいません、2年前のものとは気づかず…
しかもご丁寧に検索していただいて本当に恐縮です。
本当に極端な踵接地です。
確かに日本人は本質も理解せず流行に振りまわされがちな所があると思います。
投稿者: マル | 2008年10月18日 21:16