人類起源に新説
人類がチンパンジーとの共通の祖先から分かれたのは800万年前頃というのがこのところの定説。実際、アフリカでトゥーマイ猿人という、2足歩行をしていたと思われる霊長類の化石が発掘され、これがヒトに分岐した初期の化石と言われている。
今回米ハーバード大などが英科学誌ネイチャーで発表した新説は、ヒトへの分岐は630万年前~540万年前の間としている。これが正しければ、一旦2足歩行を獲得したヒトとチンパンジー共通の祖先が、再び入り混じった後に再び分岐したということになる。トゥーマイ猿人はヒトの祖先なのか、2足歩行をしていたチンパンジーの祖先なのか一体どちらなのか?解き明かされつつあった謎がまた迷宮に入ってしまう。そもそもほとんど原型をとどめず、発見した部位も極めて少ないトゥーマイが2足歩行していたかどうかも怪しいのだが…。
しかしこの説が正しければ、2足歩行についてある説が浮上してくるのではないかと思う。
ヒトとチンパンジーは、分岐する前から既に2足歩行をある程度獲得していたという説だ。もっというと、更にさかのぼってゴリラと分岐する前に既に2足歩行していたかもしれない。これは決して根拠のない説ではない。
チンパンジーやゴリラの歩き方は、「ナックルウォーク」といって、真猿とは異なる。真猿は手のひらを地面につけて4足歩行するが、類人猿は指の第2関節を折り曲げ、指の背(第2関節より先)を地面につけた独特の4足歩行をする。真猿と歩き方が違うのは、一旦2足歩行を獲得した後、何らかの理由で4足歩行に戻したからだというのがその根拠。4足歩行のまま真猿式の歩行からナックルウォークに移行するための必然的な理由が見当たらないからだ。また、ヒトの指の付け根の関節は反対方向にもある程度曲がる(反る)が、類人猿の場合は反らないようにストッパーがついていて、ナックルウォークに適した骨格になっている。もしヒトがチンパンジーに似た類人猿から進化したのなら、そのストッパーの名残が骨にあるはずだが、そういった形跡は見られない。
個人的にはこの説は以前から買っていたので、今回の発表は非常に興味深い。今後の研究結果が待たれる。