ようやく一通り見終わったので、競技についてコメント。まずは男子短距離から。
今大会はまさに100m、200mを世界新で圧勝し、さらに400mRでも金メダルを獲得したボルトの大会。今さらコメントするまでもないが圧倒的にレベルが違っていた。タイソン・ゲイが本調子だったとしてもとても勝ち目はなかっただろう。そのタイソン・ゲイはやはり全米選手権で故障してからの期間が短すぎた。故障を治すのが精一杯でとても故障前の状態まで戻すことはできなかった。もう一人の対抗馬、パウエルも勝ち目はなかっただろうが、なぜいつも決勝になると力を発揮できないのか。普段どおりの走りをすれば、少なくとも3位以下を引き離して銀メダルは取れたはず。
200mは、2、3番目にフィニッシュしたスピアモン、マルティナ(オランダ領アンティル諸島)がいずれもレーン侵害で失格という初歩的なミス。ボルトの驚異的な走りに動揺したのか。ボルトは19秒30の世界新、しかも-0.9m。もちろん驚異的なのだが、むしろこれに匹敵する19秒32(+0.4m)を12年前に出していたマイケル・ジョンソンの走りがいかに凄かったか、あらためて思い知らされた。
400mは無敵と思われていたウォリナーが今季力をつけてきたメリットにあっさり敗れる波乱。決勝での0.99秒差はもちろんウォリナーが最後あきらめてしまったたためついた大差とはいえ、意外だった。コーチと決別したのも影響しているのではないか。決勝では44秒台が4人、準決勝でも6人とこの種目はレベル的には上がっていない。
110mHは劉翔が故障で予選を棄権したため、ロブレスの一人舞台に。足をひっかけさえしなければ楽勝の展開になってしまった。この種目も劉翔やロブレスなどトップの選手の記録が目立っていたためレベルが高そうに見えるが、決勝は6位でも13秒46(+0.1m)と実は結構穴場の種目だった。準決勝も13秒43(-0.4m)で決勝に進出している。ロブレスが12秒93で走っていることを考えると、ハードルに不適なトラックということでもなさそう。
400mHも2大会ぶりに金メダルを獲得したテイラーの47秒25は過去3大会より速いものの、全体としてはそれほど高いレベルではなく、決勝進出ラインは48秒75。クレメントは最終ハードルで足を合わせる悪い癖が出て2着。あれだけの走力と体格があるのだから、最後のインターバルも13歩で行けないものか。あるいは、せめて逆足で踏み切れればあれほど減速することはないのだが。