久しぶりに金融の記事。
千葉の男性が、東京スター銀行に対し、20年前に預けた期間1年の自動継続定期預金の払い戻しを請求し、同行が預金の時効を理由に払い戻しに応じず、第1審、高裁でも男性敗訴の判決が出ていたが、4月24日の最高裁では銀行敗訴の判決。
自動的に継続するとしたのは預金者の意思であり、最初の満期日から時効が進むと考えるのは常識的にもおかしいと考えるのが普通であろうが、実はこれは銀行が勝手に解釈したものではなく、全銀協の通達に明記されているのだ。全銀協の通達と言えば当時はその根拠として大蔵省通達(今なら金融庁ガイドライン)があり、それに従って処理されたものが否定されたとなると、裁判所が金融庁の定義を否定したことになるのだから、実はこれは重大な問題だ。
時効を成立させて銀行の利益にさせるのは、銀行を儲けさせるためではなく、その利益の一部を所得税として納めさせる目的もある。つまり、今回の敗訴は税務当局にとっても大損害になる。金融庁や税務当局はこの判決に対して何か動きを見せるのだろうか?
ちなみに、銀行も簡単に時効にならないように手は打っている。時効が近づくと銀行は預金者に対して通知をし、通知文書が到達すれば時効にはしない。つまり時効になるのは預金者が銀行に対し転居等の届けをしなかったことも原因であり、それを怠った預金者にも責任がある。また、通帳の記入をするだけでも時効は中断されるのだが、時効成立寸前に銀行が預金者に働きかけると、今度は銀行が「脱税ほう助」として税務当局から咎められてしまうなど、銀行も微妙な立場にある。
さらに、時効成立後も、銀行も預金者本人の申し出であり、預金が既に払い出されていないことを確認できれば払い出しに応じるのが通常だ(その際の調査のコストもバカにならないのだが…)。今回は千葉の男性が旧市原信用組合に預けた預金であり、記録が十分に残っていなかったために銀行は払い出したという認識、男性はまだ払い戻しを受けていないという主張の相違が起こったのが問題であり、そもそも預金の時効の話を持ち出すべきではなかったのではないかという気もする。