実はレース前、私の個人的な予想では優勝確率は駒大60%、早大30%で残りの10%を他大学と見ていたのだが、見事に外れてしまった。
優勝した東洋大は、2強が崩れた場合は、3年前の亜大のように優勝をさらうことができる力はあるとは思っていたが、12月に部員の不祥事、監督が引責辞任と揺れたこともあり、正直、現実的には優勝は無理、状況によってはシード権も厳しいと思っていただけに、意外だった。もちろんMVPとなった5区柏原の力は大きいが、大きなブレーキのなかった早大とガチンコ勝負で復路も勝っているのだから総合力での勝利と言える。
早大は準エース高原を欠いたのが痛い。渡辺監督は6区、7区が誤算と言っていたようだが、9区高原不在が心理的にも影響したのではないか。明らかに復路の各選手の序盤の走りには焦りが感じられた。ただ、1年生の走りはかつての三羽ガラス(武井、櫛部、花田)を彷彿させるものがあり、来年は竹澤が抜けても更に強くなってくるような気がする。
全く意外だったのが駒大。確かに昨年から見ると5人が卒業し、層は薄くなった感があるが、普段から強気なことは決して言わない大八木監督だし、全日本も磐石だったのでまさかここまで危機的な状況とは思わなかった。復路で4人メンバー交代があったところを見ると、エース格の深津を含め、復路を走るはずだった選手の故障や体調不良が相次ぎ、往路に投入するはずだった控え選手を復路に回さざるを得なかったという事情が考えられる。また、宇賀地、高林、深津といった学生界でもトップクラスの選手を除いた中堅クラスの選手は、今まで順位を落とさなければいいという走りしかしたことがないので、、順位が下位になると下位なりの走りしかできなくなってしまう。
シード権争いも例年にも増して熾烈だった。大東大は個々の選手の持ちタイムや予選会の成績はさほどでもないが、奈良監督を迎えて特殊区間の強化が実った形だ。明大も決して層は厚くないが、序盤の好位置で駒大とは対照的に各選手が力を発揮した。学連選抜は、本戦出場校が増えたために選手層が薄くなり不利な状況ながらも9位に入ったのは見事。特に箱根常連校ではない学校からの選手は一匹狼が多いせいか、単独走でも力を発揮できる選手が多いように思える。
国士大や東農大はわずかにシード権を逃したものの、全体を通じて好走していた。両校とも一時期出場できない時期が続いたが、力を取り戻しつつある。13位駒大と14位専大との差は4分39秒と、14位以降は、総合力で上位校とは差が見られる。ただし東海大は5区であわや棄権かという大ブレーキがあり、本来は18位で終わる実力ではない。また、帝京大は8区までは8位にいたのだが、9区、10区が連続区間最下位で20位に沈んだ。アクシデントかどうかは不明。
初出場の上武大と、実質初出場の青学大は、まだ集団走ができる予選会を通過するのがやっとというのが本音だろう。しかし21位、22位という学校でも繰り上げなしというのは驚異的だ。22位青学大でも1人1分強縮めればシード校になってしまう。全く悲観的ではない。
城西大は昨年はわずかの差で11位、予選会もトップ通過であったが、ふたを開けてみれば序盤から最下位争いを一度も脱出できないというあり得ない展開。8区の選手が脱水症状で棄権というのを見ると、考えられるのは集団風邪か。最近はどのチームも合宿所での集団生活、練習もほとんど合同練習であるが、リスク管理面では集団生活や合同練習も考えものだ。
最近企業でもリスク管理手法の巧拙が経営の根幹を揺るがすようになってきているが、学生駅伝は各校ともチーム力に差がなくなってきており、近いうちに学生駅伝でも新たなリスク管理の考え方がが導入されるような予感がするのは考えすぎだろうか。リスク管理にはリスクを低減させるものと危機管理がある。リスク低減はこれまでも専門トレーナーの導入や順大のように血液検査による体調管理などが行われてきたが、集団風邪のような「危機」には全く対応できない。リスクの分散やフェイルセーフという考え方が必要になってくる。
例えば、今までのAチーム、Bチームといったチーム分けは1軍と2軍と同義であったが、これを全く力が均等になるようにチーム分けをし、普段は別生活、別メニューの練習を行う。コーチもそれぞれ付いていたほうが望ましい。そこまで徹底しないまでも、エントリー選手が決まったら分割するとか、正選手と控え選手は分離するといった考え方は必要になるだろう。